実行計画中の波数1の大西洋型の数値実験を行った。モンス-ンの場合には、海陸の温度差が重要な要因であり、そのためには、海面水温の分布が決定的に重要になる。それ故に、当初の海面水温を固定した場合の他に、海洋モデルと結合した、いわゆる、大気ー海洋結合モデルを用いて、数値実験を行った。 陸面が乾燥していて砂漠の場合(β=0)と、完全に湿っていて沼地の場合(β=1)の二つの場合について、大気海洋結合モデルを、砂漠の場合には15年、沼地の場合には7年走らせた。その結果分かったことは、海面水温の分布に大きな差が生じ、従って、モンス-ン循環も大きく変化したことである。 海面水温は、陸面が乾燥している時は、初期に与えられた東面に一様な場からの変化は少なく、むしろ、海洋中央部が冷たくなり、両側が暖かいという変化を示したモンス-ンに限ってみると、大陸上に顕著なモンス-ンの流れが形成され、更に、海の東側で弱いモンス-ンが見られた。それに伴い、海洋の東側の東風は弱く、湧昇も弱いという結果となった。 一方、陸面が湿っている場合には、陸面からの蒸発による積雲活動により、より強い東風が赤道域に吹き、海洋の東側に冷たい海水温域が形成された。暖水域は、海洋の西側に限られていた。これは、陸面の蒸発により地温が下がり、それによって冷やされた冷たい空気が海洋上に吹いて来て、海面水温を冷やすためである。同時に、モンス-ンを強くなり、海洋西部の積雲活動と大陸上の積雲活動がつながることにより、モンス-ンの西風が海洋西部に強く吹き込む結果となった。このように、陸面状態の差異によって、大気海洋系が二種類の状態をとり得るということが分かったことが本年度の成果である。
|