研究概要 |
水温,塩分,風の既存のデ-タを利用して,診断的に全世界の海洋の平均流速場を求め,この中に仮想的な標識粒子を投入し,これらの粒子を100年間にわたって数値的に追跡した。粒子は水平には2度間隔,鉛直には250m間隔で配置されている。4000m等深線に注目して全世界海洋を16海盆に区分したが,ここでは,南緯30度以南の南極周極流が流れる海盆をまとめて周極流海盆とし,南緯30度以北のインド洋海盆,大平洋海盆,大西洋海盆の4海盆間の3000m以深の深層水の交換状況について検討した。 1.各海盆,各層での交換は,大局的には次ぎのようになっている。インド洋の中層(1000〜3000m)水が周極流海盆の深層へ,周極流海盆の深層水が太平洋の深層へ,大西洋の中層水と深層水が周極流海盆の深層域へ移動している。 2.インド洋深層の体積の2%に相当する太平洋の中層水が,100年間でインド洋深層に移動している。 3.ウエッデル海の深層水は大西海洋盆の深層へ拡がりにくい。 4.100年間粒子を追跡して評価した置換(滞留)時間は,太平洋海盆が1019年,インド洋海盆512年,大西洋海盆439年,周極流海盆287年であった。もう少し局所的に見ると,北西大西洋海盆では151年,ウエッデル海116年と置換時間が短い。これは周極流海盆との交換と表層(0〜1000m)起源の海水の流入が多いためである。 5.四季の平均密度場のデ-タを与えて,各季節の平均流動場を診断的に求め,粒子の追跡を行なった結果の解析を現在実行している。
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