研究概要 |
1)海水密度(Levitus,1982),風の応力(Hellerman&Rosenstein,1983)のデータを利用して,診断的に全世界の海洋の表層,深層の流れの年平均場を評価した。この中に多数の標識粒子(トレーサー粒子)を投入して,理論的にこれらの3次元的な移動を追跡して,全世界海洋における水の移動・循環過程を明らかにした。 (1)以前に計算した太平洋だけを対象とした計算結果とは,チリー沖の流動場が若干異なっていて,インドネシア多島海を通る流れが影響していることが分かった。 (2)標識粒子を配置して,オイラー・ラグランジュの手法を用いた理論的な追跡を行って,各海盆,各層間の海水交換過程の様相と交換量の評価を行った。 (3)各大洋における表層水との交換過程を明らかにした。 (4)マルコフチェーンモデルを用いて,サブグッリドスケールの擾乱を与えて、粒子群の広がりを追跡して,全海洋における分散係数の分布の推定を行なった。 2)海水密度,風の海面応力場の季節変動に対する流れ場の応答を診断的に求めた。変動が大きいのは,インド洋,太平洋の熱帯海域とウェッデル海である。この流場動の変動が深層水の形成量にあたえる影響を検討した。 3)予報モデルによる平均流動場の計算を行って,診断的に求めた流動場との差異を検討したが,大西洋の深層を除くと両者の流動場に大きな差はなさそうである。 4)南極周極流が各大洋への輸送に対してはたす役割を検討するために,0.5°×0.5°の細かい格子の局所モデルを用いて中規模渦を再現できる実験を行った。現在,熱の輸送を検討しつつある。
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