研究概要 |
1.南部北上帯西緑部の松ヶ平・母体変成岩類および古生界に関する検討の結果,1)母体変成岩類と上部デボン系鳶ヶ森層とは,ほぼ平行する南北方向の垂直にちかい高角断層群によって接し,そのため両者が数m〜数100mの幅で繰り返し露出していること,2)鳶ヶ森層のアンモナイト化石から,鳶ヶ森層最上部にデボン系-石炭系境界が存在すること,3)鳶ヶ森層とその上位の下部石炭系唐梅館層とは整合であると考えられ,デボン系-石炭系が不整合関係にある南部北上帯のその他の地域とは異なること,4)放射年代測定結果の解釈として,松ヶ平・母体変成岩類はおよそ500Ma前に高圧型変成作用を受けたと考えられることなどがわかった。 2.北部北上山地の構造帯区分の基準のひとつとしてのジュラ紀砂岩組成の検討が,従来の資料に加えて,さらに広い地域からの砂岩試料に基づいて行われ,葛巻-釜石帯と安家-田野畑帯への2分案(大上・氷広,1988)が妥当であることが確かめられた。また,この区分が西南北海道にまで適用できることもわかった。 3.早池峰複合岩類のドレライト・玄武岩の微量元素組成を検討した。微量元素のMORB規格化パターンから,早池峰複合岩類は島弧性のもであることが明かとなった。また,北上山地の白亜紀花崗岩類の微量元素の特徴・主元素組成は,これらが火山性島弧あるいは陸弧で形成されたことを示し,比較的低いNb,Y,Rb/Zr値は,この島弧(陸弧)の成熟度が低かったことを示す。 4.早池峰構造帯東縁部を貫くデイサイトの捕獲岩類には,早池峰構造帯構成岩類以外のものは認められなかった。すなわち,早池峰構造帯(+南部北上帯)がジュラ紀付加体にのるクリッペであるという考えは否定されることが確認された。
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