研究課題
本研究の目的は、近年、土木工事などに用いられるようになってきた自動光波測量装置(ト-タルステ-ション=TS)を、自然露頭やトレンチにおける断層の3次元的形態や変位量分配解析装置として使用できるようにソフトウェア-及び周辺機器を準備し、1つのシステムを作り上げることにあった。そのため、第1に、目的にあった精度を持ち、かつフィ-ルドワ-クに耐えられる堅牢さと軽便さを備えたTSの選定作業が行われた。第2に、我々に最低限必要な最終アウトプットは、コンタ-付きの詳細な地形図、露頭面情報の垂直面投影図である。測量デ-タをコンピュ-タ処理してこのようなアウトプットを提供するソフトウェアは日本では開発されておらず、国外から取り寄せた。第3に、上記のソフトウェアのコンピュ-タに対する機能的要求は厳しく、それをクリアするコンピュ-タの選定には相当の時間を費やした。第4に、こうして得られた地形図や垂直投影図を、野外調査で修正したり別のデ-タを付加できるようにするために、CADシステムを加えることにした。こうして、TSを中核とする野外調査システムが一応整ったので、実際に房総半島南部清澄山で野外テストランを行った。調査員は3名、システムはワゴン車で十分運搬可能であった。コンピュ-タ関係宿舎に設置した後、TSとその周辺機器は車で露頭付近まで運搬し、作業を行った。デ-タを記録したディスケットのみ宿舎に持ち帰り、コンピュ-タ処理の後プロッタ-で露頭上の断層トレ-スを図化することに成功した。更に翌日その図の上により詳細なデ-タを記入し、その夜それをディジタイザで入力保存した。こうした作業をいくつかの断層露頭で繰り返すことによって断層の3次元的形態や変位量の分布が従来の方法とは較べものにならない高精度で、しかも短期間で得られたのである。このテストランは、TSを用いた野外地質調査の有効性を示したといってよい。
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