研究概要 |
本研究は,四国南部に分布する秩父累帯南帯並びに四万十帯中のチャ-ト及び泥質岩を地質学的・地球化学的に研究することにある。秩父累帯南帯の三畳系〜ジュラ系(放散虫により時代は詳細に決定されている)のサンプルを主として蛍光X線分析装置を用いて主成分・微量成分を分析し,堆積環境を検討した。秩父累帯南帯斗賀野層群は尾川帯・小日浦帯・西山II帯からなり,最上部層はこの順で時代が若くなっている。3帯の岩相・同一年代間の層厚の違いなどは化学組成の差異に反映され,堆積環境が異なることを示唆していると考えられる。クラスタ-分析による各元素の挙動と相関関係の考察結果から微量元素の相互関係が異なり,3帯はともにSiO_2に伴うグル-プと他のグル-プの2つに分けられる。Fe_2O_3/Al_2O_3ーMgO/Al_2O_3ーK_2O/Al_2O_3・Fe/TiーAl/(Al+Fe+Mn)・MnーanomalyーAl/(Al+Fe+Mn)ダイアグラムを用いた3帯の比較によると,小日浦帯・西山II帯は類似性が高く,尾川帯は別の領域にプロットされる。年代を考慮すると尾川帯・小日浦帯は二度にわたって熱水起源の物質の寄与が認められ,西山II帯ではそれがほとんど認められないことから,熱水起源の物質の供給源は尾川帯に一番近く,小日浦帯・西山II帯の順に遠くなることが考えられる。また,年代が若くなるにつれて急激に陸源砕屑物の寄与が大きくなる。尾川帯では陸源砕屑物の寄与が付加直前まで小さく,西山II帯ではすでにチャ-トの堆積時から酸性凝灰岩を含む陸からの影響があったと推定される。堆積深度は小日浦帯が最も深く,他の2帯はあまり差がなかったことが推測される。四万十帯については,野外調査及び試料の採集を行ったが,化学組成についての分析は現在進行中であり,今後の成果が期待される。四万十帯のKーAr法による泥質岩の年代測定は白亜紀から第三紀の地層内で行われたが,南部へ向かって次第に年代が若くなる傾向が明らかになった。
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