研究概要 |
7Tまでの磁場H(//Z^^<^>)をバルクInSbに印加して,【planck's constant】ω_<c1>>KTの量子極限の条件がみたされる4.2ー135Kの温度範囲において,印加磁場Hに垂直な方向に電流密度J(//χ^^<^>)の電流を流したときに,J_c〜16ー40A/cm^2という非常に小さな電流密度で,量子化されたバンド間誘導放射が生じることが発見された.ここでω_<c1>=eH/m_1^*cは電子のサイクロトロン角振動数であり,kはボルツマン定数,Tは絶対温度である. 印加磁場によりランダウ量子化された伝導電子からの誘導放射の波長は印加磁場の強さにより波長可変となるが,量子極限においてはまた電子と正孔の最低ランダウ準位の間で完全な反転分布状態が実現している.その一番強いα_1(0_+→0')およびα_2(0_-→0')放射のピ-ク周波数ωは 【planck's constant】ω=ε_g+(1/2)【planck's constant】ε_<c1>[1±(m_1^*g/2m]+(1/2)【planck's constant】ω_<c2h>-|e|E_y^*l^*, (1) ただし,E_y^*【similar or equal】(JH/n|e|c),の関係に従うことがその分光実験から見出された.この関係式は,印加磁場による波長可変性に加えて,エネルギ-ギャップε_gの値が|e|E_y^*l^*だけ事実上低下することを示している.ここで,m_1^*は伝導電子の有効質量,gはその有効gー因子,nは電子濃度,ω_<c2h>は放射再結合に主として寄与する重い正孔(7Tの磁場では磁気エネルギ-準位は未だよく分離していない)のサイクロトロン角振動数である.またl^*はJ×H方向にドリフトする“lucky electron"の平均自由行路であり,これは電子が散乱による大きな減衰を受けずに再結合により消減するまでに誘導電場E_y^*の作用を受けて運動する距離(〜両極性拡散距離〜1μm)と解釈することができる. 量子極限状態では,完全分布反転が実現しているため,(1)式をみたすピ-ク周波数においては,誘導放射の利得係数g(ω)は,何らかの減衰がない限り,無限大になる.これらランダウ準位の底(k_z=0)にある電子の状態密度の逆平方根特異性による発散に基づくが,このことがレ-ザ-発振の非常に小さなしきい値電流密度を与えるものと考えられる.
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