研究概要 |
強磁場を印加した量子極限のバルクInSbについて,印加磁場Ηに垂直に電流密度Jの電流を流して,J×H力による電磁力励起で非平行な電子と正孔とを励起し,そのバンド間再結合放射に基づく長波長半導体レ-ザ-の研究を行った.平成3年度の研究では次の事柄が明らかにされた. 1.J×H力で励起されたほとんど全ての電子と正孔とは,量子極限ではその最低Landau準位をほぼ完全に埋め尽くすようになり,完全反転分布の状態が実現される.この場合,強磁場極限ではΚ_z=0のバンド端における誘導放射の利得係数g(ω,Η)が,スピン分離した電子と正孔の最低Landau準位間の放射遷移に対して無限大に発散することが明らかにされた.この特異性のため,量子極限状態では極めて小さな電流密度で誘導放射が生じることが見出された. 2.放射光は一般に楕円偏光性を示すが,光共振器中で繰り返し増幅を受けるような場合には,磁気量子数Mに関して,ΔM=±1の選択則に従うextraordinary modeが選択的に増幅される. 3.室温でH【less than or equal】14Tの磁場まで印加して,cw動作で低励起状態での実験を行った結果,明瞭なバンド間Landau放射が観測された.これから室温のエネルギ-ギャップε_gの値は0.18eV,電子の有効質量m^*1^1(0)の値は0.0015m。,有効gー因子g(0)の値はー47,等のバンドパラメ-タ-の値を決定することができ,半導体のバンド構造決定の有効な武器にもなり得ることが分った. 4.組成比x=0.2のHg_<1ーx>Cd_xTe試料についても室温,80K,20Kで磁気電気光効果の実験を行い非線形的な赤外放射(ピ-ク波長λ。〜8.5μm)が生じることを確かめた. 5.Hg_<0.8>Cd_<0.2>Te試料での放射の内部量子効果はInsb試料のほぼ1/20以下で,温度低下ともに発光効率が低下することも明らかになった.また80Kにおける放射再結合の時定数は1.4μsであった.
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