研究概要 |
エレクトロルミネッセンス(EL)パネルは優れた表示品位を有しており、情報処理機器の表示装置の一つとして注目されている。本研究の目的は、カラ-化に必要な三原色のうち、青色に発光する優れたEL材料を見いだすことにある。得られた結果は以下に記す。 1.SrS母体中のEu発光中心は、共付活剤によって2価あるいは3価になることを明らかにした。とくにEuF_3を用いたときには3価になることを見いだした。しかし、SrS母体中の(4f)^6(5b)励起準位のエネルギ-位置は低く、発光色は赤色であり、青色発光は得られなかった。 2.ZnS母体中でも、Euイオンは共付活剤を用いると2価になる場合があると考えられる。このとき、Eu^<2+>イオンの(4f)^6(5b)励起準位は結晶場の強さがSrSとは異なるため、そのエネルギ-位置が高くなり、(4f)^6(5b)ー(4f)^7遷移による発光が青色領域で生じると期待できる。このような考察により、ZnS:Eu薄膜EL素子をスパッタ法により作製した。還元性をもつ共付活剤をはじめ、種々の共付活剤用いることを試みたが、明かな2価のEu発光中心の存在を確認するには至らなかった。 3.ZnS:Tm^<3+>蛍光体のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルとPL励起スペクトル、ZnS:Tm^<3+>薄膜のELスペクトルを測定し、励起機構を検討した。PLにおけるTm^<3+>発光中心の励起過程はZnS母体から ^1G_4準位へのエネルギ-伝達が支配的であるのに対して、ELにおけるTm^<3+>発光中心の励起過程はホットエレクトロンによる直接衝突励起によるため、 ^1G_4よりも ^3F_4準位の励起が支配的になることが分かった。このため、青色発光に比べて強い赤外発光が生じるものと考えられる。 4.希土類発光中心の母体材料として、ZnSやCaS,SrS母体には電荷補償や固溶度などの問題がある。このため、これらの問題をもたない母体材としてY_2O_2Sをとりあげ、EL発光が得られることを示した。
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