研究課題/領域番号 |
02452083
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清水 忠雄 東京大学, 理学部, 教授 (90011668)
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研究分担者 |
久世 宏明 静岡大学, 教養部, 助教授 (00169997)
立川 真樹 東京大学, 理学部, 助手 (60201612)
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キーワード | エバネッセント波分光 / 表面散乱 / 超音速分子線 / 二重共鳴分光 / レ-ザ-シュタルク分光 / アンモニア分子 / 双極子遷移 |
研究概要 |
昨年度に引続き、固体表面と相互作用する分子の内部状態を計測するために、超音速分子線を用いた二重共鳴分光とエバネッセント波分光を行った。本年度はまず、昨年度その温度特性を明らかにしたNH_3超音速分子線を気相分子に入射し、分子間衝突で誘起される回転状態間遷移を赤外レ-ザ-二重共鳴分光により観測した。双極子四極子相互作用に支配される回転遷移のstateーtoーstate断面積を決定し、本手法が衝突遷移の精密測定に有効であることが示された。そこで、更にこれを固体表面に散乱されたNH_3分子の内部状態変化の測定に応用した。固体試料としては、ガラス及びAu,Al等の金属を用いた。その結果、金属表面との衝突誘起遷移では、NH_3分子同士の衝突にみられる双極子遷移の選択則が崩れており、無極性分子との衝突に似た傾向を示すのに対し、ガラス表面との衝突遷移では双極子遷移の選択則がかなり優勢に効いているという興味深い事実が明らかになった。 一方、表面近傍の分子をプロ-ブするために昨年度から行われてきたエバネッセント波分光では、固体試料を新しく製作した超高真空槽に移し、より清浄なNaCl表面を用いてNH_3の振動回転スペクトルを測定した。表面付近の分子の吸収スペクトルは、気相分子のそれと比べて約1.5倍広がっており、線幅は固体表面温度の1/2乗に比例することが明らかになった。 以上の実験をもって、分子固体表面間相互作用を散乱前後の状態、及び表面近傍での状態と、多角的に検出する分光法が開発され、固体表面での衝突過程の特性のいくつかを解明することができた。今後本研究に基づいて、分子線分光法とエバネッセント波分光法を同時に組み合わせたレ-ザ-分光装置を製作し、衝突散乱過程の更に詳細なデ-タを得ることができると期待される。
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