研究概要 |
光パルスシンセサイザの原理による超高速波形合成に必要な数十テラヘルツにおよぶ超広帯域光を,電気的な制御をすることによって発生させることを目的として研究を行った. 本年度は,まず,より高効率の電気光学変調器の開発をめざして研究を進めた.前年度に開発したマイクロ波共振電極形電気光学位相変調器/偏向器をさらに発展させ,マイクロ波の高次共振モ-ドを利用することによって,動作周波数において光波とマイクロ波の速度整合を達成することに成功した.これにより,バルク形の電気光学結晶を用いても,変調波と光波の相互作用長を十分に長くすることができるようになり,マイクロ波/ミリ波領域で動作し,かつ,レ-ザ共振器内にも挿入可能な,光学的に低損失な電気光学変調器が構成できることが明かとなった. 次に,Ti:サファイアレ-ザとの組み合せによる変調サイドバンドの拡大実験を行った.このため,新たに電気光学位相変調器を試作して用いた.複合共振器構成のTi:サファイアレ-ザの副共振器内に試作変調器を挿入し,主共振器の往復に同期した周波数で変調することにより,レ-ザの帯域を利用することによってサイドバンドの帯域を拡大した.この構成は,複合共振器レ-ザの位相変調によるモ-ド同期に相当する.実験の結果,レ-ザのモ-ド間に位相同期がかかり,出力波形は220MHzで繰り返すピコ秒光パルス列となることが確認できた.ただし,パルス幅はピコ秒領域にあり,予想していたスペクトル帯域(数十テラヘルツ)を達成するには至らなかった.また,光共振器とレ-ザ利得を利用しているため,電気光学変調にくらべて安定度が低下することも認められた.これらの点の改善により,フェムト秒波形合成が可能になると予想される.
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