研究概要 |
本研究は,ボルテックスジェネレ-タにおけるように付加的な抵抗増を伴わない,より理想的な剥離防止策の実現を念頭に置いた基礎研究であり,具体的には「渦の音響励起による境界層の剥離抑制法」を提案し,その基礎研究として,剥離抑制に最も有効な強い渦構造(およびそのスケ-リング法則)と音波がその渦構造を励起する機構を明らかにし,その基礎研究の成果を種々の実用上有用な剥離流れに適用することを目的としている。前年度は,翼の失速防止に有効な過構造(のスケ-ル,強さ)とそれを音で効率的に励起するための受容性に関する基礎知識が集積されたが,平成3年度はその成果を踏まえ,本手法の実用性をさらに示すために,2元次翼列流れ(NACA65(12)10翼型,ソリディテ-1.25,流入角60°)に対して剥離の抑制効果を調べた。また,渦の音響励起に関する基礎研究の一つとして,円柱の後流渦(カルマン渦列)の音響励起(ロックイン現象)について実験と数値計算により調べた。以下に主な成果を要約する。 翼列流れ(レイノルズ数2.8×10^4)については,自然状態では転向角8.5°(翼の迎え角18°)で失速するが,渦の音響励起により転向角25°(翼の迎え角21°)まで翼に沿う流れを実現できた。 カルマン渦列の音響励起については,ロックイン現象は,攪乱の増幅を支配する剥離剪断層と円柱後流の2つのタイプの不安定性のうち後者の不安定性の極めて鋭い周波数選択性と密接に関係していて,音波により導入された攪乱がその段階で自然攪乱との増幅競争に打ち勝つときに起きることが明らかにされた。
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