研究概要 |
高温での安定性に優れており,高温機器への使用を期待されているポリエ-テルエ-テルケトン(PEEK)をマトリックスとする一方向長炭素繊維強化樹脂(APCー2)積層板を用いて静クリ-プおよび周期の長い(6分〜1時間)クリ-プ疲労におけるモ-ドI層間はく離き裂伝ぱ試験を実施し,き裂伝ぱ速度を律速する力学量にについて検討した.なお,試験温度は静クリ-プでは150℃〜210℃,クリ-プ疲労では200℃とした. (I)静クリ-プ (1)き裂は炭素繊維と樹脂の界面を伝ぱした.ただし,破面上の樹脂は大きな変形を受けており,樹脂のクリ-プ変形により界面はく離が進行したことを示していた. (2)樹脂のクリ-プ変形域がき裂先端近傍に観察されたが,その大きさは約500μmであり,き裂が伝ぱしても変化しなかった.また,き裂開口変位速度はコンプライアンスより求められた弾性き裂開口変位速度とほぼ一致した.これらは,クリ-プ変形がき裂先端近傍のみに限定され,その周囲を弾性域が取り囲む「小規模クリ-プ」状態下でき裂が伝ぱしたことを示している.さらに,き裂伝ぱ速度の温度依存性が極めて小さいことも「小規模クリ-プ」の存在を支持している. (4)き裂伝ぱ速度は弾性破壊力学パラメ-タであるエネルギ-解放率と良い対応関係を示した. (II)クリ-プ疲労 (1)き裂伝ぱ様相および破壊形態ともに静クリ-プ試験におけるそれと類似しており,クリ-プでき裂が伝ぱしたことを示している. (2)き裂伝ぱ速度はエネルギ-解放率と良い対応関係を示した.また,同関係は静クリ-プのそれと一致した.すなわち,長周期クリ-プ疲労ではき裂は純時間依存性を示し,繰返し効果がないことが判明した.
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