本研究は圧子の押し込みによって生じるミクロ破壊現象を利用して薄膜の破壊強度と薄膜ー基板の密着強度の絶対評価を行う方法を確立することを目的としたもので、平成2年度から平成4年度までの3年継続の予定のものである。この研究は薄膜応用技術の重要性が増しているにもかかわらず薄膜の機械的な強度や耐久性が未解明であり、その評価方法についても研究がおくれていることにかんがみたものである。今年度は3年継続の第1年目で、当初の研究実施計画にしたがって、基板上に完全に接合された薄膜に球圧子を押し込んだ場合の応力解析を行った。このために今年度本補助金で購入したワ-クステ-ションを用いた(ワ-クステ-ション納入までの期間は既設のパ-ソナルコンピュ-タを用いた)。この応力解析によって、薄膜、基板ならびに両者の界面に発生する引張応力やせん断応力の分布の様相が大域的に明らかとなるとともに、破壊や剥離の発生条件の検討が可能となった。つぎに次年度に行う薄膜の実験の基礎固めのために今年度はバルク材の球圧子押し込みによる破壊強度の推定を行った。そのためにまず破壊発生荷重から引張破壊強度を推定する方法を理論的に検討した。ついでバルク材としてガラス板を選び球圧子の押し込み実験を行った。これには既設のインストロンデジタル制御万能材料試験機と今年度本補助金で購入したロ-ドセルと変位計を用いた。また今年度本補助金で購入した実体顕微鏡を用いてクラックの発生状況の詳細な観察を行った。セラミックスバルク材による実験にも着手した。次年度は初当の研究実施計画にしたがって基板上の薄膜への球圧子の押し込み実験に着手する予定である。
|