研究概要 |
本研究は圧子の押し込みによって生じるミクロ破壊現象を利用して基板上の薄膜の破壊強度の絶対評価を行う方法について研究するもので,本年度は3年継続の2年目である.本年度の主な研究成果は次の通りである. 1.バルク材への微小球圧子の押し込み実験を前年度に引き続いて行い,微小なリングクラックの発生荷重から破壊強度を推定できるようになった.実験はバルク材としてソ-ダライムガラスを用い,球圧子として半径0.75mmの炭化硅素球を用いて行った.リングクラック発生荷重を測定し,この荷重から幾通りかの方法で破壊強度を推定し,推定結果と同一材料の4点曲げ試験から求めた破壊強度を比較した.これより,有効面積の概念を用い,かつ圧子と試験体の間の摩擦を考慮に入れた応力分布を用いた推定方法により,リングクラック発生荷重から破壊強度を推定できることがわかった.これにより,球圧子押し込みにより破壊強度を推定する理論式がほぼ確立できたと考えられる. 2.基板上の薄膜への圧子押し込み実験を行い,破壊の様相を詳細に観察し,薄膜の破壊強度の推定法を検討した.薄膜として本年度はアルミニウム薄膜(厚さ4μm,シリコンウェハ上に蒸着)を用いた. 3.圧子押し込みにより発生する応力分布を計算する場合に接触圧分布を楕円分布と仮定することの妥当性を検討した.このために,基板上の薄膜に弾性球圧子を押し込んだ場合の接触圧分布を,材料定数を種々変えて有限要素法により計算した.これより,どのような条件の場合に楕円分布からのはずれが顕著になるかが明らかになり,さらに本研究の実験条件のもとでは接触分布を楕円分布として応力解析を行ってもほとんど問題ないことがわかった.
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