研究概要 |
繊維配向角[±45゚]_4の8層積層薄肉円管CFRP(炭素繊維強化複合材料を用い、軸力ーねじり複合繰返し負荷の下での疲労試験を行った。疲労過程中の応力ーひずみ関係の変化および剛性率の低下を、疲労過程で生ずる単層板のマトリックスクラックおよび積層間に発生する層間はく離による材料の劣下と積層構造の劣下としてとらえ,損傷パラメ-タを導入して検討した。この結果、剛性率の低下に対してマトリックスクラックの寄与は小さく、層間はく離の発生に伴って剛性率は急激に低下し、最終破断に至ることが明らかとなった。また,複合負荷疲労試験においてはSーN線図は応力状態にかかわらず、ほぼ平行な線図を示し、寿命を支配する要因は繊維にそった方向に作用するせん断応力の大きさであることが実験的に明らかとなり、また、これは疲労過程での損傷の観察結果と非常によく一致する。今後の課題としては、疲労過程で生ずるマトリックスクラック密度および層間はく離面積を定量的に評価し、これらを損傷パラメ-タに反映させ、損傷パラメ-タの物理的意味付けを明確にすることである。 また、一方向強化CFRPの力学的特性から対称積層CFRPの変形特性を評価する方法を検討した。繊維配向角℃,9℃におけるせん断ひずみには顕著な非弾性が認められ、対称積層材においては積層間に大きな層間応力(カップリング応力)が発生する。積層における境界条件とし層間の完全接着を仮定すると、弾性率は実測値に比べやや大きく評価され、積層構造に対する何らかの修正が必要となる。積層間に樹脂による接着層が存在し、この接着層が層間応力によってせん断変形すると仮定すると、繊維配向角によらず一定の補正ひずみによって実測値を非常によく表現し得ることが明らかとなった。
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