研究分担者 |
森田 健敬 九州大学, 工学部, 助手 (70175636)
小林 正木 九州大学, 工学部, 助手 (90037789)
鳥山 寿之 九州大学, 工学部, 助手
和泉 直志 九州大学, 工学部, 助教授 (60184579)
市丸 和徳 九州大学, 工学部, 教授 (60037760)
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研究概要 |
転がり滑り接触荷重を受ける表面層の弾塑性挙動を実験と解析の両面から解明する研究の本年度の実績は以下に述べるとおりである.本年度は,体積力法(BFM)と有限要素法(FEM)を組み合わせた半無限体弾塑性解析法を開発し,繰り返し荷重下の塑性変形における等方硬化則,移動硬化則等の構成式の解法を確立した.本解析法により残留変形,残留応力,塑性流動発生機構等の解析を行い,転がり疲労試験結果と比較することにより次の知見が得られた. (1)移動硬化則による解析では加工硬化の影響で急速なシェ-クダウン状態が実現され,塑性変形が妨げられる.一方,炭素鋼を用いた転がり疲労試験での表面層の塑性流動測定により,荷重が大きい場合に表面層に前進流動が継続し,荷重が小さい場合には明白な前進流動が生じないことが分かった.この現象は解析結果と定性的に一致したが,定量的には若干の差がみられるため,実際の接触荷重の移動に伴う表面層の弾塑性挙動は移動硬化則と等方硬化則の中間的な法則に支配されていると考えられる. (2)等方硬化則を用いた解析では,残留応力は荷重の大きさと加工硬化率に依存せず,表面で引張り,その下で圧縮,さらにその下で引張りの分布となる.移動硬化則を用いた解析では,荷重が小さい場合は等方硬化則による解析結果に類似の分布となるが,荷重が大きい場合には表面も圧縮の残留応力になる.X線による転がり疲労試験片表面の残留応力測定によれば,試験片軸方向,円周方向成分ともに移動硬化則による解析値と同符号であり,両者の大小関係も一致している.従って,表面の残留応力は移動硬化則に近い傾向を示しているが,これに関しては来年度実施予定の深さ方向の残留応力分布の測定結果と(1)を合わせてその妥当性を総合的に判断する予定である.
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