本研究の目的は、切削加工に限定して、加工性評価に基づき機械部品の設計改善を提案する設計支援アドバイザ-を実現することである。本年度は、加工シミュレ-ションを主体として以下のような成果を得た。 (1)我々の研究グル-プで以前より推進しているプロダクトモデリングの研究を拡張し、公差、材料、表面性状、加工形状特徴などに対する具体的なモデリング手法を確立し、以下の研究に利用できるようにした。 (2)上記モデルを用いて切削過程の幾何学的なシミュレ-ションを行ない、これと微視的な切削モデルとを組み合わせて切削力を精密にシミュレ-ションできるようにした。さらに、切削中の振動現象についても予備的なシミュレ-ションを行ない、良い結果をえた。 (3)切削力を勘案しながら切削経路を計算することにより、切削効率と切削精度を向上させるための予備的な実験を行ない、良い結果をえた。 (4)我々は既に知識工学的手法に基づいた切削加工工程設計自動化の研究を進めているが、製品記述と必要な加工工程との関係対応を明示的に保持できるように従来の研究を拡張した。 (5)上記の(2)、(3)の結果に基づき、(4)の関係を利用して、加工性向上に影響のある製品要素を抽出できるようにした。 以上をまとめて、機能的な機械部品を対象として、加工性の観点から問題のある部分を自動抽出することのできる加工性評価アドバイザ-のプロトタイプを作成した。このプロトタイプシステムでは、設計改善はシステムからのアドバイスにより設計者が行なう。シミュレ-ションの精度を向上させると共に、設計改善を提案するアドバイザの構成が今後の課題である。
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