流れの可視化法は、流れ現象の全貌の把握に威力を発揮し、定量的解析にも利用できる有力な手段であるが、可視化する方法は、具体的問題に応じて適切な手段を工夫する必要がある。本研究課題は血液の多相流現象を定量的に解析できる可視化法を確立し、これを色々な生体臓器の血流計測問題に応用することを目的とした。 我々は血液の流れの可視化手段として、螢光ラベルトレ-サ法を用いる可視化法を開発し、新しい螢光ビデオ顕微鏡システムを開発完成した。このシステムでは、少量混入した螢光ラベルしたラテックス微粒子や赤血球は極めてよく識別でき、その運動ががビデオ画面上に鮮明な動的映像として捉えられる。ビデオ画面にある二つの窓を設定し、各々の窓の平均輝度をビデオデンシトメ-タ-で測定し、両者の輝度変化より、微粒子や赤血球の速度を計測する事ができる上、空間(管断面など)の輝度変化から血球の密度分布が評価できる。螢光ラベルしたトレ-サ(微粒子や赤血球)の良好な識別性により、通常の場合に比べて、より大きな範囲で粒子速度が計測できる点は特筆に値する。 この螢光顕微鏡ビデオ可視化解析法に基いて、In Vitroの流れ実験として、傾斜管内の血液二層流、摘出血管内の流れを研究し、ビデオモニタ-上でトレ-サ-粒子を追跡する事により、流線や速度分布などを詳細に調べた。さらに、ラットの脳動脈分岐近傍や猫の脳皮質の微小血管ネットワ-クを流れる血液の流れを、生体内で可視化を行ない、赤血球や血漿の分離した流れ、血流低下時の赤血球凝集流などの多相流的現象を計測解析した。
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