本年度の研究では、超電導導体の冷却安定性アクティブ制御に関する基礎デ-タとして、自然循環流路における液体窒素の沸騰熱伝達特性を、流路隙間・高さ・流路壁発熱条件をパラメ-タとして測定した。 1.均一発熱条件における限界熱流束CHFの整理:まず、takeーoff条件を規定するCHFについて、均一発熱条件における本測定値に基づき、流路高さHと流路等価隙間D_0との比H/D_0を用いた整理式を作成し、この整理式が、液体ヘリウムおよび液体窒素双方について、流路形状(短形、円管、環状流路)および発熱条件(両壁、片壁発熱)によらず成立することを見出した。ちなみに、水など通常液体について実績のある既存整理式は、両液体のCHFを過大評価する。 2.部分発熱条件におけるCHFの挙動:上流側発熱量を変化させ局所CHFを測定する実験を行い、上流側発熱量がCHFの90%以下であれば局所CHFには影響しないことを見出した。 3.ステップ発熱時のtakeーoff条件のモデル:外来熱擾乱に対する導体温度のtakeーoff時間を予測するために、定常沸騰におけるCHFモデルの過渡核沸騰への拡張を試み、本モデルが液体ヘリウムおよび水に関するtakeーoff時間の既存デ-タをよく整理することを見出した。ちなみに既存モデルは液体窒素など他液体のtakeーoff時間を過大評価する。 4.均一発熱条件における膜沸騰熱伝達:回復電流にかかわる膜沸騰熱伝達は、H>1■■の液体窒素流路ではH=∞の場合の解析値にほぼ等しく狭い自然循環流路でも回復電流値は低下しないことがわかった。 5.以上の実験、解析により、自然循環流路を有する超電導導体の冷却安定性アクティブ制御に関する基礎段階がほぼ終了した。
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