微小重力下での材料融液中に混入している気泡あるいは液滴を除去する方法の一つとして、本年度は、融液に温度勾配を与えた場合に気・液(気泡の場合)界面あるいは液・液(液滴の場合)界面に生ずる界面張力の不均一分布による力を利用して気泡(液滴)を移動させる方法について基礎的実験を行った。 材料融液を模擬する試験流体としてシリコ-ン油を用い、これを満たした直方体容器の上下壁面(水平に設置)の間に温度差をつけ、シリコ-ン油に注入した単一空気泡の挙動を顕微鏡およびCCDカメラを通してCRTモニタ-画面上に写して観測した。まず、温度勾配を与えないで行った予備実験によって、液体中を浮力の作用によって上昇する空気泡の終端速度が理論的予測値にほぼ一致することを確認した。次に、容器の上下壁面間に下方壁から上方壁に向かって低下するような温度勾配を与えた場合について実験を行い、空気泡表面に作用する表面張力分布の作用によって、気泡の上昇速度が抑えられること、数値的には、気泡の移動速度は低速度気泡に対する理論的予測値におおよそ一致することがわかった。 実測値と理論的予測値の差異の原因は、主として液体の諸物性値の温度変化および液相・気相間の吸収・放出による気泡径変化によるものと推測されるが、確認は次年度に行う予定である。また、落下塔を利用して擬似微小重力実験、また、電場を利用した気泡(あるいは液滴)の除去実験なども次年度に行いたいと考えている。
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