本研究は、宇宙ステ-ションなどの微小重力場を利用した材料製造技術に関連する基礎的研究であり、材料融液中に混入した気泡(あるいは非混合異種液滴)を表面張力差あるいは電場を利用して移動させ、融液外に除去する技術の開発を目的とする。1Gの重力加速度が作用する地上においては、融液中に混入した気泡は浮力を受けて上昇し、液体外に排出される。しかし微小重力場においては、気泡はそのまま液体中に静止している。これは、融液を凝固させて材料を製造する際に障害となる。微小重力場において液体中の気泡を除去するには、浮力以外の力に頼る必要があり、その一つとして表面張力差の利用が考えられる。液体の表面張力が、液体の温度あるいは濃度(ただし多成分系の場合のみ)によって変化する現象(マランゴニ効果)を利用し、液体中に温度勾配あるいは濃度勾配を与えれば、気泡と液体の界面に流動が生じて気泡は表面張力の小さい方に向かって移動するはずである。本研究ではまずこのような現象についての理論的解析および実験観測を行った。しかし、実用的見地から見ると、表面張力差による気泡の移動は、作用する力が微弱なために緩慢であり過ぎる。そこで本研究では、さらに外部から電場を印加することにより、液体内の気泡に作用する電気流体力学(EHD)的効果を利用し、より迅速に気泡を移動させる方法を行い成果を得た。 昨年度に引き続き本年度は次のような研究を行い成果を得た。 (1)温度勾配のある液体中での微小空気泡の移動速度の測定を地上重力下で行い、理論値との一致を確認した。 (2)落下塔を用いた微小重力実験を行い、理論値との一致を確認した。 (3)直流電場を印加することによる、液体中の気泡の移動現象を確認した。
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