近年地球環境保護の観点から重要な課題となっている炭酸ガスの排出量削減の一方法として、流下水膜への炭酸ガス吸収促進につき研究を行い以下の成果を得た。まず炭酸ガス中で円柱外面に沿って水液膜を流下させスピ-カにより特定の周波数の振動を加える実験を行った結果、周波数が50〜90Hz程度の振動を加えた場合に物質伝達率が増加し最大2倍程度の吸収促進が生じることが分った。さらに液膜波形の測定を行い、波の周波数スペクトルと吸収促進の関係を調べたところ、波の振幅と周波数の積が大きいほど吸収促進率が大きく、表面波による吸収促進機構として波1個あたりの吸収促進量が波の振幅に比例し、これに波の個数すなわち周波数を乗じたものが全体としての促進量に対応することが分かった。以上の実験研究に加え流下液膜に生じる表面波とCO2吸収に関する非定常数値シミュレ-ションを行った結果、実測されるのと同様な孤立波状の大波が生じ、この大波内部に存在する循環流による表面更新により吸収が促進されることが明らかとなった。さらに、吸収量を大幅に向上する可能性がある炭酸塩添加による吸収促進について研究を行った。まず炭酸塩水溶液中での炭酸ガスのイオン化反応による飽和吸収量を理論的および実験的に求め、両者の一致を確認し、純水への物理的溶解に比べ、飽和吸収量が最大30倍増加することを明らかにした。次に炭酸塩水溶液を用いた流動液膜へのガス吸収について実験を行い、液膜中の濃度が飽和値に近くなる低流量の場合に炭酸塩添加による吸収促進効果が大きいこと分かった。さらに化学反応速度から吸収速度を理論的に求め実験値と比較した結果、液膜内の反応物の拡散が吸収反応を律速していることが分かった。以上の結果より炭酸塩添加による吸収促進を効果的に行うためには、気液の接触時間を長くとるとともに、液膜内の混合を促進する必要があることが明らかとなった。
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