研究概要 |
石英ガラス上に巾0.1mm,長さ0.25mm,厚さ0.25×10^<ー3>mmの白金をスパッタリングすることによって、極めて微小な伝熱面を作成した。極微小なためにこれを液中に浸し、比較的小さな電力を与えて従来の沸騰実験に較べて桁違いに早い昇温速度と高い熱流束を実現して実験した。装置は、パルスジェネレ-タ-,高速電力増巾器等の主部、ストレ-ジ・オシロスコ-プ等の計測部,顕微鏡等の観察部より成り、本実験のために最適なシステムを設定し、調整した。 また、一連の非線形二次元熱伝尊シミュレ-ションを行い、温度計測の誤差およびその補正、二次元温度分布などについて予め検討した。 先ず、常圧下の純水について一連の実験を行った。昇温速度は0.7×10^8K/sに達し、熱流束は10^8W/m^2以上で、従来の二つの種実験より約1桁上の性能を得た。パルス状加熱時間5μs以内で多数の発泡を認め、最高10^<10>K/m^2の密度を得た。このように伝熱面上にほぼ等しい大きさの微小気泡が一挙に多数発生する現象を、特に「キャビア状発泡」と名付けた。また発泡開始時の温度は均質核生成温度の理論値に近付くことを確かめた。さらに、有機液体としてエタノ-ルとトルエンを選んで一連の実験を行った。この場合も「キャビア状発泡」現象を認め、発泡開始時の温度は均質核生成温度の理論値に、それぞれ一致することを確認した。また、古典的核生成理論を本実験系に適用して一連の理論計算を行った。それによれば、発泡数の時間的増加の傾向、温度との関係などは、理論計算値と実験体の傾向が良く似ていることを見出した。以上の結果、「キャビア状発泡」で代表される高熱流束下の発泡現象は、ゆらぎによる核生成に起因する現象であると推論した。
|