本研究では、生物の筋肉をモデルとした微小静電リニアアクチュエータの集積化法の基礎を確立するとともに、その駆動法について検討することを目的とした。 研究の結果以下のことが分かった。 1)アクチュエータを積層化する際に必要なステータ上の両面に電極を配置する4通りのパターンについて電位分布シミュレーションを行ったところ、電極内外のポテンシャル差に優位の違いはないことが分かった。またステータの厚みによる電極内外のポテンシャル差にも違いが認められなかった。この結果ステータは強度的な問題が許す限り薄くしていくのが有利であることが分かった。 2)電極を多数個集積した際の電極の内外に蓄積されたエネルギーから有効に利用できるエネルギーを求め、これを基準に集積限界を評価した。その結果ステータの電極のアスペクト比(電極長さ/対向する電極間の距離)には最適値が存在し、アスペクト比が0.8で集積化するのが適当で、実験でも妥当であることが確認された。 3)理論的検討を基に、一層につき20個の基本素子を集積化したものを試作し、10kHzで駆動して電圧の出力に及ぼす影響を調べたところ、吸引力は理論通り電圧のほぼ2乗に比例することが確認された。 4)この集積化したものを5層並列に組み合わせ、合計100個の基本素子を有する、外形が幅44×長さ44×厚さ8.82mmの多層集積化モデルを試作した。100V、10kHzの交流電圧を印加したところ、31.85mNの吸引力を発生した。力密度としては1.865kN/m^3以上の値が得られ3次元集積化の効果を確認することができた。 5)有効に力を発生する基本素子ができるだけ多くなるような駆動法を考案し、これに基づいて連続駆動用の平面方向集積化モデルおよび2回路4端子のスイチイング回路を製作した。1ステップ2.5mm(電極長さの1/2)の連続駆動を行ったところこの方法が有効であるとこが確認できた。
|