研究概要 |
3ケ年計画の初年度に当たる本年度は超高速静電気放電観測系の完成を目指した。帯電させた高分子薄膜を水平方向に自由に移動できる自動XYデジタルステ-ジを実現し,試料位置の再現性,実験手順の均一化が可能となった。一方,別の計算機によって制御されたZ軸ステ-ジの先端部に直径5mmの導体球を配しで帯電面に接近させて静電気放電を発生させ,その際の導体球を伝って接地面まで流れる静電気放電電流波形,放電発生時の距離(帯電面と導体球間)などを測定した。この放電電流の立上がり時間はきわめて短く1ns以下(ほぼ測定限界)の高速現象が観測されること,帯電面は正に帯電している場合ほど放電距離が大きくなると共に放電電流の立上がりは遅くなり,また,電流のピ-ク値,積分値の減小などが認められた。これは金属球表面からは電子が放出され易いため,負帯電面では導体が充分に接近した後初めて放電が生じるためと考えられる。尚,負帯電の場合,一度静電気放電が発生すると沿面方向に伝搬し易いためか,放電電流の大きさは3倍程度に大きくなることもわかった。この現象は,放電後の表面電位分布測定やダストフィギュア観測結果とも一致している。また,導体球と接地板との接続線の長さや配置によって明らかに電流波形変化が生じることが確認され,分布線路的扱いが不可避であることが判明した。一方,模擬としてナノ秒パルスによる沿面放電を観測したところ,1mm/ns以上の高速沿面放電進展が観測され,本当に進展しているのか,あるいは,並列的に放電が発生しているのかといった問題点を明らかにすることができた。来年度は基礎デ-タのより一層の充実を目ざす予定である。
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