研究概要 |
3ケ年計画の中間年にあたる本年度は昨年度構成をほぼ完了させた自動静電気表面放電観測装置を充分に稼動させ,多くの知見を得ることができた。実験は主に厚さ50μmのFEPを用い,表面の帯電電荷量をパラメ-タとすると共に,この表面に接近させる接地導体球の大きさ(直径)をそれぞれ,3,5,12,5,25mmと交換して静電気放電を観測したものである。尚、放電電流波形(時間変化)ならびに球電極とフィルム間の距離とは計算機に取り込まれ,そのままの形でフロッピ-ディスクに記録され,電流波形はレ-ザプリンタに出力される。また,電流の時間積分により放電により移動した全電荷量も計算される。一般に,フィルム表面を正に荷電した場合,球電極の直径が大きくなるほど放電距離は短くなることが認められた。これは,接地導体球の大きさが小さいほど球電極表面の電界が大きくなり電子が放出され易くなったためと考えられる。一方,負に荷電した場合には,反対に,球電極が大きほど放電距離も大きくなる。これは試料表面から放電が始まること,大きいほど確率的に放電し易いこと等によるものと思われる。また,球電極が小さい(5mm以下)では正荷電の方が放電しやすい(放電距離大)のに対し,負荷電の場合には,大球電極で放電距離が大きくなることが認められた。また,いずれの場合にも表面電位が6kV以下の場合,放電距離は1mm以下,立ち上がり時間ns程度であることが判った。また,同じ電界強度(表面電荷密度が等い)の場合,電位差の大きい,即ち,厚い試料ほど放電し易く,そのときの開放エネルギ-も大きくなることも実証できた。放電発放写真も工夫中で,来年度中には放電写真等の新たなる情報を取り入れる予定である。
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