3ヶ年計画の最終年度にあたる本年度は、昨年度までに完成させた帯電した誘電体薄膜と接地球導体間での静電気放電の自動測定装置を用いて様々な条件下における静電気放電を詳細に調べた。特に、静電気放電実験における最大の問題、即ち、データが分散することを軽減して実験の信頼度を向上させる目的で静電気放電の発生する場所に初期電荷を与えることを検討した。即ち、除電処理方式としても有名な放射線の照射を検討し、実現可能な手段として67kBqの^<90>Srによるβ線照射ならびに5Wのペンライト式のUV紫外線照射を行なって静電気放電の変化を調べた。β線照射は長時間照射しても見かけ上の表面電荷密度はほんど変化しない程度と弱かったためか、はっきりした影響は認められなかった。一方、紫外線照射では、若干放電時の距離が増加したり、放電電装や移動電荷の減少が記録された。特に負極性の時にその傾向が大きいようで、ばらつきも若干減少したが、その程度は予想値よりも小さかった。また、イメージインテンシファイアを用いてこの静電気放電の写真撮影にも成功した。その結果では誘電体が負性の場合、放電は誘電体表面にかなり広がっているように見える。一方、正極性の場合には金属表面が発光し、そこから中心部のみが誘電体膜に向かって放電が延びていることが認められた。但し、装置上、写真は発光を積分したものである。また、接近させる導体球表面を別の除電した誘電体薄膜で表面を覆うことにより誘電体間での静電気放電電流を初めて観測することができた。放電距離は20〜30%短くなること、放電電流等は1/3〜1/4に減少すること、若干の極性依存性が残ることなど多くの知見がえられた。また、静電気放電に伴って空間に放出される電磁波などについてもループアンテナやダイポール・モノポールアンテナ等を自作して測定することができた。高周波成分は少かったがかなりの雑音が検出された。
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