研究概要 |
本研究は,従来,その存在は知られていながらその実態はほとんど知られていない静電気放電現象を解明しようとするもので,特に,エネルギー的には少ないが立ち上がり時間が短くパルス的な放電距離の短い場合を目標として,一様に帯電させた誘電体薄膜を接地板に載せ,その上方から接地板に長さの定めた接地線によって接続された導体球を一定の速度で誘電体薄膜に接近させて静電気放電を起こさせ,その際の放電距離,接地線を流れる放電電流波形などを全てパーソナルコンピュータに取り込む自動計測装置を作成し,それらの帯電量依存性,誘電体膜厚依存性,極性依存性などを調べた。その結果,誘電体を正に帯電させた場合には放電距離は長く,反対に放電電流や移動電圧量は少くなることが判明した。また,放電の立ち上がり時間は1ns以下ときわめて急峻であること,放電電流の振動は反射等回路的要因によることが確認された。この振動の半分の周期の電磁波の発生をループアンテナやダイポール・モノポールアンテナによって確認することができた。また、静電気放電特有の分散を軽減し,実験の再現性を向上する目的で放電箇所にβ線(67KBqの ^<90>Sr)照射、あるいはペンライト形のUV紫外線照射下での実験を行い,放電距離が若干大きくなり放電電係が小さくなる傾向があることを確認できた。更に,像増倍管による発光観側で極性による相違(正では金属面で,負では誘電体表面で放電していることが判明した。また,導体球を無荷電の誘電体薄膜で覆った誘電体-誘電体間での静電気放電をも実測し,放電距離が2〜30%小さくなること,放電電流は1/3〜1/4に減少すること,極性依存性が残ること,誘電体膜厚依存性は少なくきわめて薄くても効果的であること等多くの知見が得られた。尚,帯電した誘電体膜の厚さが大きくなったり帯電量が増加すると放電モードが変化すること等が確認され今後の課題として残される。
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