研究概要 |
超高圧交流送電線の電気的環境問題の中で,特に人体に対する電磁界カップリング現象に注目が集まっており,その定量化が人体影響の検討のみならず,動物実験の電磁界条件決定においても必要不可欠になっている.この場合,体内電流密度が長期間の電磁界暴露の影響を考える上で重要なファクタであると考えられる.本研究では送電線などの電力設備からの電界・磁界のフェイザ解析および人体誘導電流密度の解析を目的とし,次のような研究成果を得た. 1.電界の垂直成分および磁界の水平・垂直成分が存在する空間に置かれた回転楕円体状の人体モデルの内部に誘導される電流の密度分布を計算した.その結果,通常の送電線からの電界・磁界では電界による起誘導力は磁界のそれより数倍ほど大きいことが分かった.人体モデルについても同様の結果を得た. 2.送電線直下の大地付近のポインディングベクトル解析より,有効電力密度はkW/m^2のオ-ダに達し,人体周辺のその流れは等電位線に沿っていることが明かになった. 3.電界による人体頭部内の誘導電流の密度解析より脳内部の電流は脳骨髄液によりかなりしゃへいされることが分かった.今後,頭蓋骨を含めた各組織の導電率に関する正確なデ-タを把握する必要がある. 4.電磁界の生体影響が誘導電流密度に基づくと仮定すると,電界の成分を考慮に入れた生体実験を行う必要がある.磁界は誘導電流の方向を変える働きがあるので,この点に着目した解析を今後行う必要がある.
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