研究概要 |
本研究では、新しいIIIーV族希薄磁性半導体、(In,Mn)Asの分子線エピタキシ成長とその成長層の評価を行った。研究実績は、以下の通りである。 分子線エピタキシ 基板温度(200〜300℃)によって、相分離を起こさずに得られるMnの最大濃度が異なり、伝導型も異なる。300℃では相分離しない組成範囲はx<0.03であり成長層はp形であるが、200℃ではx<0.25、n形である。その組成範囲を越えると、第2相としてMnAsが出現する。 エピタキシャル層の評価 (1)磁性 n形試料はすべての温度にわたって、常磁性であり、Mn間の相互作用は、反強磁性的でその強さは、最近接Mn間で-1.6Kである。p形試料は、中高温領域で常磁性であり、ある温度以下では、自発磁化が生じる。そのふるまいは、やや複雑で、自発磁化と同時に、磁化には高い磁場に至るまで常磁性的応答する成分も含まれている。(2)電気的性質 n形試料は、低温で負の磁気抵抗効果を示した。p形試料は、室温から1.4Kの低温までホ-ル係数は正の値(p形)を示し、200K以下では、ホ-ル係数が異常ホ-ル効果に支配されていることが明らかとなった。7.5K以下では、ホ-ル係数のB依存性にヒステリシスがみられ、自発磁化が異常ホ-ル効果を通して観測された。同時に、高磁場まで負の磁気抵抗効果が観測された。このp形特有の結果は、正孔とMn間の強磁性的相互作用の結果、互いに平行になろうとする多くの傾いたスピンを内包する大きな磁気ポ-ラロンが試料内に存在すると考えられることで説明される。小さな磁場によって大きな磁気ポ-ラロンが回転する。これが自発磁化、ホ-ル効果のヒステリシスとなる。強い磁場ではポ-ラロン内の傾いていたスピンが徐々に揃えられ、試料内の磁気的不均一性が減じ、抵抗が減少するため、負の磁気抵抗効果としてあらわれる。希薄磁性半導体内で局在キャリアー磁性イオンの交換相互作用に基づく強磁性秩序を観測した初めての例である。
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