研究概要 |
(1)表面超格子に関する成果:斜め研磨したGaAs結晶基板上の準周期的原子ステップにGaAsやA1Asを選択成長させると原理的には表面超格子や量子細線が形成できる。この手法は周期が100A程の構造が作れる反面,面内のポテンシャルには周期成分Vpに加えて組成揺らぎに伴うランダムな成分V_Rが生じる難点がある。本研究では,両者が共存する表面超格子に対し,その伝導特性と光学吸収の偏波面依存性の理論を確立し,実験との対比を行った。この結果,表面超格子に特有のブラッグ反射の効果が電子伝導,特に移動度の電子数(即ちゲ-ト電圧)依存性に反映されて,負性相互コンダクタンスの生じる条件が示された。また,面内ポテンシャルがランダムであっても、重い正孔と軽い正孔状態の結合を生じせしめるものがあれば,光吸収の偏波面依存性が現れるため,偏波依存性は量子細線状態形成の必要条件であって,十分条件ではないことなどが示された。試作したグリッド入り表面超格子との対比により,構造上の知見を得た。 (2)量子細線に関する成果:量子井戸の端面を露出させ,その上に変調ド-ピング層を形成する手法は,断面の小さな量子細線の形成法として最適のものである。このエッジ細線につき解析を行い,電子状態と散乱過程を明らかにした。まず,細線の基底準位の構造依存性を調べ,その中に収容できる一次元電子の密度Nsは,量子井戸幅が200A程で最大となること,Nsはスペ-サ膜厚にさほど依存しないことなどを示した。さらに,エッジ細線界面の凹凸による電子散乱を評価し移動度μを求めた。その結果,μは電子密度Nsの増加に対し急激に増大し,10^7cm^2/Vsを越すこと,量子井戸幅を200〜250Aにした時凹凸散乱が十分に減ることを明らかにした。へき開及びファセット成長により,層状構造端面に伝導層を形成する手法を明かにし,その伝導特性についても新知見を得た。
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