将来のディジタル移動通信に重大な障害を与える山岳反射波の特性と伝搬構造の研究を行った。多重波伝搬構造測定のために、多重波の遅延時間と強度を測定するTVパルス法を開発し、大学構内での野外実験により仮想反射点を求めて解析し、建物による反射と区別して山岳・丘陵からの反射波を確認した。その結果、付近の丘陵からの反射波は最大で2μsec以上の遅延時間をもち、その強度は直接回折波に対してー10及至ー20dBの相対強度をもつことが確認され、大学構内においても丘陵反射波が重大な影響を与えることが予想される。 山岳・丘陵からの反射波のみの強度を理想的な条件で測定するために、工学部棟西方の丘陵に向けて電波を発射し、TVパルス法により時間軸上で反射波を分離して測定を行った。一方、山岳反射では入射した電波が山岳の反射面で吸収により減衰し、残りの電波エネルギ-が余弦法測により散乱すると仮定した理論計算により、山岳反射波の受信強度を求める一般的な計算式を導いた。この式を用いて、実測された反射波受信強度から反射面での吸収減衰量を求めることができる。計算の結果、測定した丘陵の吸収減衰は約20dBであることが示された。 また、反射波強度の連続測定により、反射強度が短時間及び長時間の時間的変動を示す現象が発見された。特に、積雪により反射強果が数dB上昇する興味ある現象が観測された。 以上のように、反射面の吸収減衰を実験的に求めて、山岳反射波の強度を理論的に予測できる可能性が明かとなり、また反射波の遅延時間は地図上で容易に求められるので、この方法によってディジタル移動通信の誤り率に対する影響を計算により評価できる見通しを得た。今後更に実験と解析を継続し、実用的予測法と反射波の伝搬構造を明らかにして、山岳反射波軽減法の研究に入る予定である。
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