研究概要 |
本研究は、副作用が原理的に生じない検証性と高度並列・多重処理の能力を併せ持つ、データ駆動型処理原理を基礎として、了解性の高い各種の図的な手法を導入した多面的な仕様記述体系から、効率のよい高度並列・実時間処理プログラムを自動生成するソフトウエア環境の確立を目標として、開始された。 1.通信ソフトウェアに関する基礎的研究:高度並列・実時間処理の典型として通信処理を取り上げ、従来の逐次処理モデルの拡張ではなく、新しい並列処理モデルを基礎とする総合的なシステム開発・保守環境の必要性を明らかにした〔研究発表の1,2番目参照〕。 2.多面的図的仕様記述手法に関する研究:特定の仕様記述形式を利用者に強要することなく、対象とする問題を多様な側面から各々に適した形式を用いて表現できる、多面的な記述手法が,実時間・高度並列処理の仕様記述として有望であることを明らかにした。具体的には、状態遷移図、決定表、関係表、データブロック図などの形式的表現に加えて、一般的な機能ブロック図やシーケンス図などの半形式的な表現形式を共存させる階層的記述手法を導入した〔研究発表の3番目参照〕。 3.データ駆動型処理モデルに関する研究:先の仕様記述から生成されるプログラムの実行原理として、状態遷移処理と構造体データ処理を導入した動的データ駆動型処理モデルが有望であることを明らかにした〔研究発表の3番目参照〕。 4.仕様記述体系の実現法に関する研究:上記の多面的仕様記述手法の体系的実現法として、機能ブロック図のようなフローグラフ型記述とデータブロック図のような木構造型記述を核として選択し、これらを中心としてジェネリックに機能を増強できる自己適用的実現法を明らかにし、そのプロトタイプとして、現在稼働中の1チップデータ駆動型プロセッサ上で実行可能なプログラムの生成系を設備備品に申請したワークステーション上に構築した〔研究発表の3,4,5,6番目参照〕。 5.プロトタイプの評価:実時間処理の具体例として、HDLCプロトコル処理、ならびに、エレーベータ問題を取り上げ、本プロトタイプ上で仕様記述実験を試みた。その結果、仕様記述の各階層での追加型プロトタイピングの重要性を再認識し、状態遷移を含む処理に関して、要求が未確定でもスタブを用いた実行可能プログラムを生成できる手法を明らかにした〔研究発表の5番目参照〕。
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