研究概要 |
本年度の研究の主な成果は次の通りである。 1)全可観測な環境でのテスト容易な論理回路として,kUCーNAND回路を提案し,その性質を調べた。ここで全可観測な環境とは,すべての論理ゲ-トの出力線が観測可能であることを意味する。この回路の特徴は,全可観測な環境では,固定長のテストパタ-ンで,すべての縮退故障およびスタックオ-プン故障をテストすることが出来ることであり,その長さは,それぞれk+1,k(k+1)+1である。ここで,kは理論ゲ-トのファンイン数であり,通常は2か3であり,非常に短いテストパタ-ンが得られる。この結果は,電子情報通信学会論文誌及び1990年の耐故障計算国際会議(FTCSー21)で報告した。 2)種々の論理回路について全可観測な環境でのテスト生成,故障診断表の作成,故障位置指摘を行なうために,ワ-クステ-ションシステムを構築した。 3)任意の論理回路をkUCーNAND回路に変換するためには,付加ゲ-トと付加入力が必要となる。しかし,最小付加数を見つけるアルゴリズムは,NP完全であるので,近似解を求る手法を用いてベンチマ-ク用の回路変換を行ない,付加ゲ-ト数の評価を行なった。この結果については,1990年の国際テスト会議(ITC90)で報告した。 4)kUCーNAND回路が全可観測であるとして,故障診断を行なうアルゴリズムを開発し,ベンチマ-ク回路を用いて故障診断の模擬実験を行ない,電子ビ-ムテスタ-を用いる場合の実行時間などその効率について評価を行なった。大規模回路の取り扱いを可能にするため,故障診断表の階層化を行ない故障診断アルゴリズムを開発した。この結果は1990年度の「電子ビ-ムテスティングシンポジウム」で発表した。
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