研究概要 |
本年度は全可観測な環境での故障診断に関する研究を中心に行った。その主な成果は次の通りである。 1)故障位置の指摘をするためには,故障表を実用的な大きさに圧縮する必要がある。本手法では,テストベクトルペアの印加に対する応答による故障候補の絞り込みと,電子ビームテスタによる故障位置の絞り込みを反復利用している。この手法は、観測容易化設計によらない通常の組合せ回路に対する取扱いが可能であり,対象故障として多重故障の存在を許している。また,この手法は直接故障表を用いないので,計算に必要な記憶容量も相対的に少なくてすむことになる。この手法を用いた実験結果を,日本学術振興会132委員会第121回研究会(電子ビームテストシンポジュウム)で報告した。 2)本研究では全可観測な環境としてすべてのゲート出力が観測可能であるとした。しかし,故障診断という観点からすれば十分条件ではあるが必ずしも必要条件ではない。全可観測という条件を外し,外部出力だけが観測可能とした場合について多重故障を対象にその故障診断について考察した。この成果,電子情報通信学会FTS研究会で報告した。 3)電子ビームテスタを用いる診断手法の一般化として,ガイデッド・プローブ法による故障診断について考察した。故障診断を高速化するためには,観測信号線数の削減が必要であり,その解決法として故障診断表をもちいる手法と,回路のネットリストから計算する方法について考察した。これら両手法を実用化するために,故障確率の概念を導入し故障状況を一般化し,ベンチマーク回路に対してこれらの手法を用いた実験を行い,その有効性について考察した。この成果は論文として,電子情報通信学会英文誌に投稿中である。
|