画像入力デバイスの構築に先立って、主としてまず画像演算機能について検討を行った。その結果をまとめると次の通りである。 1.TN液晶セルの偏光回転特性を利用した論理演算素子を考案し、試作した。これは、2枚のマトリクス液晶パネルと3枚の二色性フィルタ-を積層させたものである。二色性フィルタ-の吸収波長を適当に設計すると、入射光の波長を切り換えることによって、2値の論理演算のすべて(16種類)を実行させることができる。 2.上記のデバイスでは2枚の液晶パネルを積層するために、一般に偏光回転の波長分散が生じ、コントラストが著しく低下することを明らかにすると共に、その改善方法を考案した。 3.液晶セルとしてマトリクス液晶パネルを用い、2つの表示画像の各画素間で論理演算を行わせることにより、高速に光画像処理が実行できることを示した。 4.上述のTNセルは、応答速度が数msと画像処理用には十分でない。そこで、1/2波長条件を満足させた強誘電性液晶セルで置き換えることを目的として基礎的な研究を行い、次のような結果を得た。 (1)強誘電性液晶は一般に均一な配向(bookshelf構造)を形成するのが困難であるとされているため、まずこの問題について検討を行った。その結果、基板表面の配向エネルギ-を低くした上で方形波電圧を印加することによって、再現性よくbookshelf構造を形成させ得ることが明らかにされた。 (2)1/2波長条件は特定の入射波長でのみ満足される。従って、入射光の波長を切り換えた場合には1/2波長条件が満足されなくなる場合がある。この問題について、論理演算の結果に及ぼす影響及びセルの最適設計条件を明らかにした。
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