本年度は、赤外域(波長λ=10.6μm)で逆スミス・パ-セル(ISP)効果を実験的に観測するために、サブミリ波帯での実験及び理論結果に基づき設計した回折格子を始めとする各実験装置の製作を行い、その準備を進めた。以下に得られた成果を箇条書きに述べる。 1.サブミクロン精度のシリコン(Si)製回折格子の製作 回折格子は、電子とレ-ザ-光との相互作用回路となる重要な装置である。特に赤外域で使用するISP効果用の回折格子は、各溝定数に(格子ピッチ=5.3μm、溝幅=2.1μm、溝深さ=2.2μm)にサブミクロンの製作精度が要求される。そこで、精密加工が可能なSi基板を用いた回折格子製作を一層進め、設計値を実現するためのエッチングレ-ト等の各種条件を実験的に明かにした。 2.微小電子検出系の製作 駆動レ-ザ-の短波長化に伴う信号電子数の減少に対処し、電子検出部に新たに2次電子増倍管(MCP)を装備した。又、それに伴う電源系及び前置増幅器等の改良を行い、従来の最小電子検出電子数を一桁下げた。 3.高安定EMQスイッチCO_2レ-ザ-の製作 駆動用レ-ザ-として用いるパルス動作型CO_2レ-ザ-(EMQスイッチレ-ザ-)の出力安定度を改善するため、パルス電源系、及び管冷却系の改良を行い、安定度(パルス毎の波形再現性)を従来に比べ30%向上させた。同時に、高出力化を計り、現在まで、繰り返しレ-ト350ppsで70kWの出力を単一基本モ-ド、単一ピ-クパルスで得ることが出来た。これは、本研究を行うに十分な特性である。 以上、基本的な装置製作を終了し、本研究計画の当初の目的を達成した。
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