研究概要 |
平成3年度の研究として、前年度に引き続き、3原色を含めた同時多波長(1〜3波長)レ-ザパルス光の発生に関する研究を行ったが、今期は特に基本現象の把握と共に、安定的発生を主目的に、単独および混合色素系に関する理論的、実験的研究を行った。実験では特に多波長レ-ザ光発生のための色素励起用として開発した、高効率、高エネルギ-窒素レ-ザ(繰り返し0.4pps,時間幅7.5ns,電圧15kV,窒素ガス流量10 l/minで4.6mJ,全効率0.18%,10ppsでは3mJ,0.12%)を継続して用いた。色素は青色領域でCoumarin460(Cー460)、緑色領域ではDisodium Flourescein(DF)、赤色領域ではRhodamin610および640を使用し、それぞれ2〜3種混合色素系による多波長同時発振に関する実験を行った。混合色素系の色素の選定に当っては、色素間の相互作用であるエネルギ-移動に関係してくる色素の吸収および蛍光スペクトルの帯域を考慮し、実験に先立って各色素の単独および2種混合時の発振特性の検討、さらに利得計算による最適濃度導出のためのシミュレ-ションがなされた。3種混合色素系の実験では、赤色領域での発振帯域の拡大を試みた結果、実験で使用した全ての3種混合色素の組み合わせにおいて、3原色同時発振を得ることに成功したが、これは今後の研究進展の基盤となる成果である。混合色素系における発振の濃度依存性について、混合時の赤色領域における発振波長は、短波長領域における現象とは逆に単独時に比べ、短波長側にシフトする事が確認されたが、これは混合色素系の吸収、蛍光スペクトルおよび励起波長が関係してくる本質的な現象であり、今後とも厳密な検討を要する。また色素の循環系の適用は、3原色を含めた同時3波長レ-ザ光の安定発生および長寿命化に大きく影響したが、これは実用化に関する一つの成果といえる。
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