| 研究概要 |
疲労き裂伝播中の1サイクル中のコンプライアンスの微小な変化挙動の考察を行い,き裂が停留するのは負荷の最大値が離散的に減少する結果,次のサイクルで弾性挙動しかしない場合に生じることを考察した。塑性挙動をおこす下限の荷重をRPG荷重と定義し,このRPG荷重を計測するために高精度で微小なコンプライアンス変化を計測できる試験システムを新たに開発した。この試験システムを使用してCT試験片で計測した結果,長いき裂に対してはき裂開口荷重<RPG荷重<き裂閉口荷重という関係が存在し,き裂成長中ステ-ジIIではこれらの荷重は一定値をとるが,ステ-ジIIIに入る直前からこれらの荷重は減少していくことが判明した。一方切欠試験片では初期にはき裂が開口するため,き裂開口荷重およびき裂閉口荷重は負荷の最小荷重より小さく,いわゆる有効荷重範囲は,外力による荷重範囲と等しくなるが,RPG荷重は最小荷重よりも大きく,き裂成長とともに減少しあるところで一定値を示すようになる。他方き裂開口荷重およびき裂閉口荷重はき裂成長とともに上昇しある一定値を示すようになる。そしてこの一定値を示す状態になると(ステ-ジIIに対応すると考えられる)、上記のような関係が成立するようになる。ということが実験的に明らかとなった。
そこでこれらの現象を解析的に求めるため、Dugdaleモデルを任意応力分布下のものに拡張し,さらに塑性域には変位連続性をもたせるようにした疲労き裂伝播モデルを作成した。しかし最小荷重で開口する状態では,Dugdaleモデルによる評価は行えないので,最小荷重におけるき裂の曲率半径よりRPG荷重を推定するよう修正を加えることにした。このモデルの正当性を確めるため,弾塑性有限要素法によるき裂伝播モデルも開発し、現在上記手法についての検討を行っている段階である。またき裂が存在しない場合の等価K値についての検討も現在行っている。
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