本年度は、2組のD16異形鉄筋の重ね継手を平行に設けた鉄筋コンクリート両引供試体を用いて、静的載荷および繰り返し載荷を行い、継手部における横ひびわれや縦ひびわれの発生状況、破壊強度、鉄筋周辺のコンクリートの内部ひびわれ、鉄筋のまわりのコンクリートの円周方向の引張ひずみ、鉄筋の軸方向の応力分布などを調べる実験を行った結果、次のような知見が得られた。なお、本研究費で購入した万能デジタル計測器は供試体の載荷試験に際し、コンクリートおよび鉄筋のひずみ変化の測定に使用した。 1.重ね継手部の破壊は、一般に、継手端部から鉄筋軸方向に発生する縦ひびわれの成長によって生ずる。この縦ひびわれの発生時期は、かぶりの大きさが大きくなると遅くなる傾向が見られたが、重ね合わせ長さの大小との間には明瞭な関係が見られなかった。繰り返し載荷は、縦ひびわれの発生時期よりもその成長速度に影響する傾向が見られた。 2.重ね継手の鉄筋周辺のコンクリートには数多くの内部ひびわれが鉄筋のふし部から発生していることが明かとなった。特に、重ね合わせた2本の鉄筋の接合面付近には、両方の鉄筋のふしとふしとを斜め方向に結ぶような内部ひびわれが発生し、全体としてトラス機構を形成していると考えることが出来る。この内部ひびわれは、荷重の増加または荷重の繰り返しによって成長する。 3.重ね継手の鉄筋のまわりのコンクリートの円周方向引張ひずみは、継手両端部で最も大きく、継手中央に行くにつれて次第に小さくなり、継手全長の約1/4程度のところから内側では極めて小さくなる。この円周方向ひずみはかぶりが大きくなれば小さくなり、荷重の繰り返し載荷で増加する。
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