研究課題/領域番号 |
02452197
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
基礎・土質工学
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川本 眺万 名古屋大学, 工学部, 教授 (80023018)
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研究分担者 |
京谷 孝史 名古屋大学, 工学部, 助手 (00186347)
市川 康明 名古屋大学, 工学部, 助教授 (30126833)
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研究期間 (年度) |
1990 – 1991
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キーワード | スクイーズィング / 膨張性地山 / トンネル崩壊 |
研究概要 |
我が国のトンネル建設において、いわゆる膨張性トンネルと呼ばれるトンネルの崩壊事例が数多く見受けられるが、このように地山がトンネル空間に押し出される現象のメカニズムについては、未だ十分い理解されているわけではない。従来は、トンネル周辺地山があたかも膨張しているように見える現象を直接捕え、ある種の粘土鉱物が吸水してスウェリング(膨潤)する結果であると評価されていた。 しかし、過大に膨潤しうる程の水供給が無かったり、膨潤性粘土鉱物の含有量が相対的に少ない地山でのトンネル膨張事例が数多く報告されており、本研究では、むしろトンネルの周辺地山が降伏して塑性流動する結果が、膨張現象となって現われるものと考え、このようなメカニズムによる現象をスウェリングと区別してスクィーズィングと呼び、その定量的評価法を明かにすることを目的とする。このような現象の評価のためには、スクィーズィングロックの力学特性、特に降伏後の応力-ひずみ挙動を明かにすることが必要となる。 そこで、本研究ではまず第一に、日本において膨張性と呼ばれる地山でのトンネルの施工報告から種々の試験・計測データを収集整理し、スクィーズィングロックの力学特性を明かにした。それらの結果は、全て一軸圧縮強度との相関式として整理されている。さらに、収集した岩石試験結果から応力-ひずみ曲線を分析し、状態ひずみ比なるパラメーターを抽出定義し、それとトンネル壁面の周方向ひずみとを関係づけ、スクィーズィングのレベルを5つに分類する方法を提案している。 つぎに円形トンネルに関する壁面ひずみの理論解をそれぞれのスクィーズィングレベルに対応させて誘導し、その材料定数を先に整理したデータベースからすべて一軸圧縮強度と対応づけることによって、トンネルの土被りと地山の一軸圧縮強度のみをインプットすることによって、トンネルの壁面変位を簡単に予測するチャートを作成した。さらに、支保工による内圧効果を考慮した場合のチャートも求め、無支保で予想される壁面変位を許容値まで押さえるのに必要な支保工を設計することも可能となる手法を提案している。 最後に、この手法を日本における代表的な膨張性トンネル事例に適用し、計測値と予測値を比較することによって、地山の弾性波速度の分布さえ決まれば、事前設計に十分に役立つ範囲の精度で、トンネル縦断に沿った壁面変位の分布を予測できることを示した。本研究の成果は十分に実用化されうるものであると思われる。
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