研究概要 |
本研究は,河川や海岸において,水面の変動によって生ずる水底地盤の液状化あるいは固化現象について,その発生メカニズムを明らかにしようとしたものである.とくに海岸においては,うねりやセイシュのような長周期の波動による海底地盤の崩壊やブロックの沈下埋没など,河川においては,流動化した泥流型土石流が平地や貯水池に到達して堆積する過程をとりあげ,その物理的機構の究明をめざした.得られた成果は次の通りである.1.海底地盤の液状化 波浪により海岸構造物や消波ブロックが沈下する原因として,地盤の液状化が指摘されているが,両者の関係は十分には明らかにされていない.そこで,構造物の沈下と地盤の液状化との関係を実験的に検討した.実験では,直方体の水槽内に細砂を用いて飽和砂地盤を作成し,外部から変動水圧を与えることにより,地盤の液状化ならびに構造物の沈下現象を模擬発生させた.この時,実際には変動水圧によって水槽自身に歪変形が生じるため,まず,水槽の歪が構造物の沈下にどのような影響を及ぼすかについて,アクリル製及び鋼製の水槽を用いて検討した.その結果,水槽の歪み率が小さくなるにつれて構造物の沈下速度は遅くなり,鋼製水槽を使用すれば水槽の歪みは無視できることが明らかになった.そして,水圧変動に伴う地盤内の有効応力の変化と,構造物の沈下過程との対応関係を詳細に検討した結果,構造物の沈下量から砂層の圧縮量の影響を差し引いた「正味の沈下量曲線」により,沈下は有効応力が負となる位相の時に生じていることが確認された.2.河川地盤の液状化 流動化(液状化)した土砂を高濃度に含む水の流れが,平坦域や湛水域に流入した場合の堆積過程について検討した.その結果,外力によって浮遊できる粒子濃度より過剰な粒子が沈降堆積するモデルを示すとともに,それにより実験的な堆積過程の現象をよく説明できることを明らかにした.
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