国内・外で得られた地震(M>7)による強震地動記録を用い、加速度時刻歴波形を周波数領域に変数を変換して定められる特性(周波数域特性)が時間とともに変動する特性(非定常性)を評価する解析を行った。波動論ならびに既往の研究より、地震地動は周波数域非定常性を含むとされるが、本研究では、耐震工学的に有意と判定される非定常性をどの程度に強く、さらにどの様な傾向を有して含むかを定量的に評価することを試み、それに供する資料作成を行った。本年度は、十勝沖地震等による国内記録、米国西海岸地震での著名記録、近年の1985年メキシコ地震、1989年米国ロマプリ-タ地震記録を対象とした。ロマプリ-タ地震では比較的近傍の区域内で複数の記録が得られており、観測地点の地盤条件が周波数域非定常性に及ぼす影響を評価することを試みた。 本年度に実施された研究の成果の概要は以下の点にとりまとめられる。 1.強震地動記録波形には周波数域非定常性が含まれる。ただし、全ての記録波形がこれを含むものではない。 2.解析された非定常性は地動前半で短周期成分、後半で長周期成分を卓越して含む。この傾向によって、RC造のような復元力履歴特性が剛性低下型である構造物に対しては地震応答を成長させる場合がある。この現象は地動と建築物の周期特性の対応、建物の強度に対する地動の入力強さ組み合わせで顕著となる。 3.定量的な評価ができる段階ではないが、定性的には、非定常性は軟質地盤上での記録波形に強く認められる。周波数特性の変動も軟質地盤上での記録の方が変動する間隔ならびに変動する周波数域値とも大きい。 4.次年度以降に計画されている観測記録を用いての非定常性評価を行う際のデイジタル地震観測装置の選定を行うとともに、購入ならびに建物内に設置し、地震記録の実測を開始した。
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