実測された強震動記録を用い、地震動に含まれる周波数域非定常性を評価する解析を継続的に行うとともに、入力に含まれる周波数域非常性が建築構造物の地震時応答を増大させる進行性応答に及ぼす影響を評価する地震応答解析を実施した。本年度の研究実施項目ならびに得られた成果の概要は以下の点にまとめられる。 1.米国カリフォルニア州鉱山地質局ネットによって採取された1989年ロマプリ-タ地震記録(総93点中の46観測点での記録)を収集した。記録は等質で、地動特性に及ぼすパラメ-タを検討する上で有効である。 2.地震動に含まれる強度非定常性を補正(削除)する強度定常波を策定し、周波数域非定常性の解析を実施した。強度補正は解析結果を変動させず、一方、周波数非定常性を強調する妥当な補正であることを確認した。 3.強度定常波を用い周波数域非定常性の解析を行い、卓越周波数の出現・消散傾向により非定常性を5パタ-ンに分類を行った.目視による判断に基づくが、周波数域非定常性をパタ-ン類型化することができた。 4.観測点の地盤を岩盤、沖積層、粘土稚積層に分類し、地盤条件が周波数域非定常性の及ぼす影響を類型化パタ-ンとの相関を考慮し、検討した。対比により、軟質な地盤では非定常変動が大きいことが明らかになった。 5.構造物を1自由度系にモデル化し、固有周期、弾塑性履歴特性、地動強さ(逆には、構造物の強さ)をパラメ-タとする応答解析を実施し、非定常性が地震応答に及ぼす影響を検討した。塑性等価周期によって応答を評価することを試み、非定常入力に対する弾塑性応答が成長する場合には、等価周期が入力の卓越周期に一致するよう伸長する結果を得た。これは、非定常入力が応答を増大させる機構を明らかにする事実と考えられる。 6.観測装置による地震実測を継続して行った。本年度は処理対象となる規模の記録は採取されなかった。
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