実測された強震計記録を用い、強震地震動に含まれる周波数特性がどのような非定常性を有しているかの解析を継続して行い、この周波数域非定常性が建築構造物の地震応答を増大させる機構について検討を行うとともに、最終年度のとりまとめを行った。本年度の研究実施項目ならびに得られた成果の概要は以下の点にまとめられる。 1.1989年米国ロマプリータ地震記録の解析を継続して行い、地盤種別との相関を検討し、地盤条件が軟質に区分される場合、周波数域非定常性が他の条件に比して強く含まれることを明らかにした。 2.各周波数成分の強度の時間変動により周波数域非定常性を移行型、出現型、デルタ型、双子型、定常型の5パターンに類型化し、これと地盤種別との相関を検討した。 3.千葉県東方沖地震(1987年)ならびに1993年1月の釧路沖地震による強震計記録を収集し、周波数域非定常性評価の精度向上を目的として、稀事象としての強震地震の地震記録データベースを充実した。 4.弾塑性地震応答解析を行い、地動の周波数域非定常性が構造物の応答をどのような条件で成長させるかを数値解析によって検討した。構造物の弾塑性履歴としてRC造を対象として原点指向型、D-Triの剛性劣化型履歴を設定し、類型化した強震記録による応答解析を行った。弾塑性応答を等価周期に換算して評価した結果、ある程度の強さの入力が加えられる条件下で、応答は等価周期を入力地動の卓越周期に一致するよう成長し、周波数域非定常性を有する強震動は進行的な塑性応答を励起する機構を形成することを明らかにした。 5.実強震動に含まれる周波数域非定常性の特性ならびに非定常周波数特性を有する地動入力が加えられる場合の建築構造物の応答特性について、本研究課題の成果の取りまとめを行った。
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