実測強震動記録を用い、地震動に含まれる波形の周波数特性が時間とともに変動する周波数域非定常性を非定常スペクトル解析によって評価するとともに、地動の周波数域非定常性が建築構造物の地震応答を進行的に成長させる現象が生じること、ならびにその成長の過程を明らかにした。本課題の成果は、以下の点にまとめられる。 1.観測ネット等のデータの質が高く、また地動レベルの高い米国ロマプリータ地震、釧路沖地震の記録を収集し、これらの記録のスペクトル解析を行い、実強震動波形に周波数域非定常性が含まれることを明らかにした。 2.46地点で記録が得られているロマプリータ地震記録を一連解析することにより、卓越周波数成分の強さの変動(非定常特性)を移行、出現、デルタ、双子および定常型の5パターンに類型化分類した。 3.非定常特性を記録観測点の地盤種別条件との相関より検討し、軟質と分類される地盤条件で得られる波形に比較的非定常性が強く含まれること、地盤条件による類別化されるパターンの非定常性が含まれる傾向が認められることを明らかにした。 4.地震応答が1自由度振動系により表記される建物の弾塑性応答を、系の弾塑性履歴特性、固有周期、地動強さ等をパラメータとする解析を行い、周波数域非定常性が構造物に及ぼす影響を検討した。弾塑性応答を等価周期に換算して応答を評価した結果、ある強さレベルの入力が加えられる条件で、応答は等価周期を入力地動の卓越周期に一致するよう応答が成長する現象を明らかにした。 5.応答成長過程を分析することにより、原点指向型等の剛性劣化型の履歴特性を有する構造物では、入力地動の周波数域非定常性が進行的に応答を成長させ、過大な応答を生じさせるメカニズムを考察した。
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