研究概要 |
市街地の温度形成に関する研究を,全体的な見地から市街地の気温の予測,気温の形成と制御に直接関与するものとして植物層の熱特性,ならびに建物外表面の熱伝達特性,の三者を扱うこととした。 市街地の気温の予測については,気象要素を基にして物理的機構をふまえた気温形成のモデル式を導き,大阪・京都などの都市の長年の気象観測値と,人工排熱量として電気・ガスの使用量を基にして重回帰分析を行い,気温形成の予測値を得た。その結果,明らかに人工排熱量が気温形成に効いていることが,人工排熱量を無視した重回帰分析の結果より知ることができた。この解析法は人工排熱量の絶対量が不明でも,年々の変動傾向が知れることによって解析可能,という特徴がある。京都では近年,日射量の観測値がないが,日射量の代りに日照率を用いて解析できることが,大阪と潮岬の解析に適用することによって確かめた。水蒸気圧の室温形成への効き方が物理的意味からみて説明できない結果となったが,それには気温と水蒸気圧が一体として変動しているとも考えられ,エンタルピ-としての形成モデル式も検討している。市街地の植物層の熱特性としては,公園の林のような植物群落を通しての日射の透過の問題を放射輸送方程式を基にして導びき,トウモロコシなどの日射透過の観測デ-タを利用することによって,理論モデルの妥当性を確認することができた。これにより,種々の植物層への応用が,葉の散乱関数と葉面積密度を知ることによって算出可能となった。建物外表面の熱伝達性状に関しては,建物と建物で囲われた都市キャニオンで熱的要素の連続測定を行い,建物表面および地表面の熱収支とともに,壁表面の熱伝達特性を知ることができた。
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