研究概要 |
本年度は,気象観測資料の統計処理,植物群落内の気流拡散,都市表面層のふく射熱輸送について研究を進めた。 日本の主要都市の1951年から40年間の気温,水蒸気圧,相対湿度について,2月と8月の経年変化を調べてみると,2月の気温上昇は東京,大阪の大都市のみにおいて顕著で,他の都市では見られなかった。8月の気温上昇は,瀬戸内地方を除いて日本各地の主要都市で明らかに生じている。気温上昇が冬に小さく夏に大きいということは,日射量が冬に小さく夏に大きいことと対応し,地上での日射熱の吸収が経年的に増加していることを示すと解され,これは都市での建物の増加による影響と推察されるものである。湿度の経年変化については従来,注目されていなかったが,北海道を除いて冬と夏ともに水蒸気圧の経年減少が認められている。これは人間活動の一環としての地覆率の増大によっている,と解されるものである。 大阪および東京について最近30年間の気象観測値を基にして,1月と8月について気温を従属変数とした重回帰分析を行い,予測値と観測値がよく合致することから,電力・ガス使用量に基づく人工排熱量をゼロとおくことによって,人工排熱量による気温上昇効果を算出した。 植物群落内の気流拡散については,既に開発したわれわれの乱流モデルを他のモデルと比較検討し,われわれのモデルの妥当性を明らかにした。 都市表面層のふく射熱輸送については,建物群模型について日射反射率の指向特性を実験と数値計算により明らかにした。
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