第1に、長年居住者が住みつづけてきた公営住宅団地を、コミュニティ・ハウジングの視点から更新する際には、高齢者をはじめ、住み手の自律性を重視することが肝要である。即ち、自律性を「環境に対して、住み手自らの意志で、積極的に働きかけること。あるいは、既成の秩序(規約)にとらわれずに全体の中で自己を認識しながら、独自の秩序を創り出そうとする動き」と定義した。こうした住み手の自律性を触発するには、従前の団地で熟成されてきた固有の集住様式、住環境、維持管理方法等、集住体としてのハ-ド・ソフト両面にわたる居住資源を全体に対する秩序感をもちつつ、各自が伸びやかな個性表現を行う自律的集住体形成という視点から積極的に評価し、更新計画プロセスに住み手自ら能動的に関与する仕組みによって、それを継承・発展させることである。このような考え方のもとに、居住資源のひとつとして住み手の自律的環境管理に着目して、本来その管理権が自治体側にあり、他律的に利用を規制される共用空間を、住み手が自律的に活用していること、利用をめぐり維持管理の方法等が固有の集住生活の秩序として確立されていること、その利用過程に人と人、人と環境の共生的対応が内包されていることで人と環境のデザインのありようとしてのコミュニティ・ハウジングの姿が伺えることから、外部空間の一部を住み手が自発的に利用権を獲得し、日常的な維持管理を実践している家庭菜園 をもつH団地の調査・分析を行った。 第2に、ユ-コ-トにおける周辺地域社会に開かれたコミュニティ活動の調査を行った。周りの住民のプラス・マイナスを総合すると、ユ-コ-トと地域の人々は、限りない柔軟性と開放生をもった議論・行動を重ねながら、新しい豊かな包括的な開かれた集住の地域文化を生成させようとしている。
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